巴御前 − 代表的女武者の心底にあったものは?

a2b369c0.jpg強女萌と呼ばれている男性諸氏にはお待たせした。お馴染み、美女ファイターの登場である。
冒頭より腰を折るようであるが、当時いうところの美女とは現在の意味ではない。
女中さん、差別用語か? (夜のお相手も含むところの)下働きの女性、という職制上の名称のようなのだ。
それ故、木曾義仲の愛妾という説明がされている人物なのであるが。
とはいうものの、平家物語によれば、「色白く髪長くして、容顔誠に美麗なり」ということなので、今日言うところの美女と解してもよかろう。
女武者として名高い彼女の数多い武勇伝の中で最もそれらしいのが、『木曾最後』のこのくだりであろう。

五騎が内までも、巴は討たれざりけり。木曽殿、巴を召して、「己は女なれば、是よりとうとう何ちへも落ち行け。義仲は討死をせんずるなり。若し人手に、かからずは、自害をせんずれば、木曽の最後の軍に女を具せられたりなんど、云はれん事こそ口惜しけれ。とうとう落ち行け」と宣へども、猶落ちも行かざりけるが、あまりにつよういはれ奉て「あはれ、よからう敵かな。木曽殿の最後の軍して、見世奉らん」とて、ひかへて敵を待つ処に、武蔵国に、聞えたる大力、おん田の八郎師重、卅騎ばかりで出で来たり。巴其の中へ懸け入り、おん田の八郎に押し雙べ、むんずととつて引き落し、吾が乗つたりける鞍の前輪に押し附けて、ちっともはたらかさず、頸ねじ切って捨ててんげり。

なんと、力自慢の武将の頸を素手で捻り切ってしまったというのだ。
この内容であるから、世に言うところのMF(ミックスファイト=男女勝負)サイトでも時たま話題にもなる。
であるのだが…

残念ながら、この景における巴の心裏には何らのサディズムもない。いやそれどころか、一遍の異常性癖すらも。
あるのは、ひたすらひたすら義仲に対する恋心のみ。そしてそれは盲目的ですらある。
女の一念なんとやら、この超人的な働きもそのモチベーションをいれたところで考察すれば、別れ話に駄々を捏ねる古今東西極ありふれた女の行動の一つに過ぎないといえるのではなかろうか?
恋の対象であり、主人でもあった義仲は彼女のこの行動を望んではいない。言わば背信にして命令違反。
論者はこの種の同性には共感を覚えない。正直反発すら感じるところである。

それよりも、巴とともに戦った木曽軍の兵士たちが彼女のことをどう見ていたかに興味がある。
ことによれば、今日のMFサイト訪問者たちに似た憧憬をもって巴御前を見ていた男性もあるやもしれぬ。


posted by homer_2006 | サディズムに花束を!
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