ゲルマン神話の創造者たち A − 雷神トールの敗北

4fa50e0e.gif北欧神話は一月前に取り上げたか。奇しくも前回と同じく、付属マゾ男性向けSM創作短編集のリンク元解析より寄稿をおもいたった。
即ち。
女子の相撲に関する関心が非常に高いようなのである。
これが、所謂MFファンということになると…
男女が肉体をぶつけ合い万人の目に勝敗が明らかに映る方法での直接対決をする、とのことでそれなりの人気があるのであろう。
まあ残念ながら、『ガールズ ビーツ ボーイズ』のSM性 の稿で結論付けたごとく、(一義的には)SMというわけではない。特に女性側の心裏は。
とはいうものの、かの神話一の勇者トールが女と相撲をとって負けたという逸話は一稿裂くだけの価値はあろう。
論を進めよう。

言いかけたように、雷神トールというのはゲルマン神話一の勇者猛者である。
日本神話で言えばスサノオ、中国四大奇書の世界なら西遊記の孫悟空、三国志の張飛、水滸伝の魯智深あたりに相当する暴れん坊である。
彼が巨人族その他と闘い、これを打つ負かしたエピソードは枚挙に暇がなし。
が、唯一…

ヨトゥンヘイム(巨人の国)訪問の折のトールは負け続け。
全てのコンペティションで悉く負け続ける。
極め付けが彼が最も得意とする腕力勝負、なんと最後の最後トールはエリという女性との相撲勝負において完敗を喫するのである。
ゲルマンの神話創部らしい徹底的な破壊・汚涜と言えよう。
経緯を掻い摘もうか。

この折の、巨人の王ウトガルド=ロキはトールら一行を(表面上は)友好的に迎える。
よって先ほどコンペティションと表現した。早食い競争、かけっこ、当初は歓待のための余興のようなところから始まった。
あるであろう? 負けているうちに段々熱くなってくるということが。
主人ウトガルド=ロキは決して勝ち誇らなかった。だが、これが…
嘲られるよりも、勝ち誇られるほうが、勝ち誇られるよりも、憐れまれるほうが、より腹がたつであろう?

事実トールも自らが酒の飲み比べに負け、更には彼の飼い猫を持ち上げることも出来ず、
「お前さんはいい飲み手だ。だが仕方ない。その体格(つまり彼らは巨人)では」
と同情され完全にきれた。

「小さくても負けはせぬぞ! (巨人の誰かと)直に戦わせろ!!」

やめとけ、やめとけ、怪我するから、という感じか?
巨人王が雷神の対戦相手に選んだのは、ヨポヨポの老婆であった。
…論者・別ブログばりの悪戯演出であったか?
でも、相撲の対戦相手とすれば、これほどの格下もなかろうて。
そして、雷神トールはエリというこの老婆をピクリとも動かすことが出来ないのである。
いくら力をこめてもこめても。ジリジリ押されたトールはついに力つき片ひざをついてしまう。

「勝負あった!」の一声。
ここでノーサイドとなった主客は晩餐をともにすることになるのだが。

翌朝別れ際、ウトガルド=ロキは種明かしをする。全ては彼の魔法…
まあ、どの対戦相手も絶対に勝てない相手であったのである。例えばこの老婆は「時」であった。
どんな屈強の戦士でも時とともに老いてしまう。老いには勝てるわけがないのだ。
訳書によっては直接『老醜』としている本もある。

一方『時代』『時の流れ』と訳しているそれも少なくない。
どんな英傑であっても歴史の流れに抗うことができない…
本論説ブログの一貫した結論と一致する。


posted by homer_2006 | サディズムに花束を!
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